外国人採用支援
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介護業界の外国人雇用の現状
2020年、世界中をパンデミックに陥れた新型コロナウイルス感染症の影響で、全世界において出入国制限が敷かれ、我が国日本においても、2013年以降外国人労働者が拡大傾向にありましたが、2020年の増加幅は2019年の3割程度と大幅な縮小を余儀なくされました。
これまで外国人労働者数において圧倒的な数を誇っていた製造業、サービス業、卸売業・小売業等がこの新型コロナウイルス感染症により深刻な打撃を受け、外国人労働者の雇用にも影響が及んだことは言うまでもありません。
全世界が行動制限、経済界への打撃により明るい兆しを見出せない状況にある中、介護関係職種(「福祉施設指導専門員」、「その他の社会福祉の専門的職業」、「家政婦(夫)、家事手伝」、「介護サービスの職業」)については、新型コロナウイルスの影響を受けるどころか、むしろ、このコロナ禍により外国人労働者の受け皿として特需のような状況にあります。
慢性的な人手不足に悩む介護業界では、コロナ禍の今こそ、外国人労働者を雇用する体制を整え、外国人人材の長期雇用を可能とする基盤を作るチャンスといえるでしょう。
介護業界で可能な在留資格
日本政府においても、介護業界における外国人労働者の受入れを推進しており、在留資格を創設することで、介護人材として従事するための入口拡充に注力しています。
ただし、在留資格によって、就労可能な期間、従事可能な業務、受け入れ企業として必要な対応は異なってくる点については注意が必要です。
外国人労働者を受け入れる企業は、正しく在留資格を理解し、外国人労働者を雇用、就労させることが求められます。
介護
「介護」の在留資格とは、国内で介護福祉士として介護又は介護の指導を行う業務に従事することが可能な在留資格のことです。今現在、「介護」の在留資格を取得するには、二つのルートがあります。
①養成施設ルート
日本の介護福祉士養成施設(専門学校、大学、短大など2年以上の過程修了が必要)を卒業して介護福祉士国家試験に合格する。
②実務経験ルート
介護施設等で3年以上勤労や研修を受けた後、介護福祉国家試験に合格する。
介護の在留資格は、高い日本語能力(N2以上)が求められるため、外国人にとってこの資格を取得するのは容易なことではありません。また、介護福祉国家試験は2021年1月に実施された時点で合格率71.0%と比較的難易度の高いものです。
しかし、介護福祉国家試験に合格し晴れて介護の在留資格が取得できれば、①永続的な就労が可能②配偶者や子の帯同が認められるなどメリットが大きいため、介護業界に従事する外国人労働者にとっては、目標とすべき在留資格となっています。
外国人労働者を受け入れる企業にとっても、この資格を得ている外国人労働者には、在留期間・業務の制限がないため、長く幅広いフィールドで活躍することが期待できますし、登録支援機関によるサポートも不要なため、コスト面や内省化している企業にとっても支援業務の負担がないといった面で大変魅力的です。
EPA介護福祉士
EPAとは、経済連携協定のことをいい、インドネシア・フィリピン・ベトナムの三カ国が対象です。
EPA介護福祉士になるには、まずEPA介護福祉候補者になる必要があります。
EPA介護福祉候補者となるには、まず、国別で規程された条件をクリアせねばなりません。
インドネシア・フィリピン
・自国での候補者条件をクリア
・訪日前の日本語研修(6ヵ月)
・日本語能力試験N5またはN4程度以上の取得
・訪日後の日本語研修(6ヵ月)及び介護導入研修
・受け入れ施設(介護施設)での業務研修
なお、日本語能力試験N2以上の取得者は、訪日前と訪日後の日本語研修が免除されます。
ベトナム
・自国での候補者条件をクリア
・訪日前の日本語研修(12ヵ月)
・日本語能力試験N3以上の取得
・訪日後の日本語研修及び介護導入研修(2.5ヵ月)
・受け入れ施設(介護施設)での就労・研修
なお、日本語能力試験N2以上の取得者は、訪日前と訪日後の日本語研修が免除されます。
これらの条件を満たし、EPA介護福祉士候補者の在留資格を得た外国人労働者は、以下の施設で研修を行いながら、日本の介護福祉士の資格取得を目指します。
なお、EPA介護福祉候補者として滞在する間の在留資格は、「特定活動」となります。
・特別養護老人ホーム ・介護老人保健施設 ・介護老人福祉施設 ・介護療養型医療施設
・障害者施設 ・デイサービス ・短期入所 ・養護老人ホーム
※定員30名以上の介護施設であること、介護職員数(候補者を除く)が法令に基づく配置基準を満たすこと、常勤介護職員の4割以上が介護福祉士有資格者であること、候補者に対して日本人と同等以上の報酬を支払うこと、適切な研修体制を確保すること、も要件となっています。
3年以上の実務研修を経た後介護福祉国家試験を受験し合格すれば、EPA介護福祉士の在留資格を得て、「介護」の在留資格と同様、永住者と同じように就労し生活することが可能です。また、家族を呼び寄せることも可能です。
EPAは、政府の政策的な側面からのバックアップがあり補助金を受給することができる点でも大変魅力的な制度である一方、介護福祉国家試験に合格できなければ、帰国しなければならないというデメリットもあります。さらに、EPA介護福祉士候補者として日本に滞在できる期間は4年と決まっているため、実務と試験勉強の両立が求められる点からも、簡単な道のりではないことは想像に難くありません。なお、滞在最終年度(4年目)で不合格だった場合でも、1年間の滞在延長が認められています。
EPA介護福祉士候補者の受入れの実務は、協定に基づく唯一の受入れ調整機関である公益社団法人国際厚生事業団が行います。
EPA介護福祉士候補者ないしEPA介護福祉士を受入れた機関には、外国人労働者の在留期間更新申請のタイミングで、国際厚生事業団への定期報告が義務付けられています。
技能実習介護
技能実習制度は、大前提として、在留資格「介護」やEPA介護のように、介護業界の人手不足を補うことを目的としていません。あくまで、日本で働いて得た技術や知識を習得して母国に帰国し、自国の発展に役立ててもらうことが目的です。
したがって、雇用契約上では日本人と同等ですが、技能実習生をもって人手不足の労働力として扱ってはいけない点は、大変重要なポイントです。
また、設立3年以上が経過している介護事業所(介護福祉士国家試験の実務経験対象施設)となり、訪問系サービスは対象外である点も注意が必要です。
介護での技能実習生を受け入れるには、①企業単独型:海外に拠点を持つ企業などが現地法人などの職員を独自に受け入れ実習を行う方式 ②団体監理型:事業協同組合などの非営利の監理団体を通じて技能実習生を受け入れる方式 があります。
現状、介護業界では、②の方法で受け入れるパターンが主になっています。
技能実習生は技能実習1号、技能実習2号、技能実習3号と区分されており、技能実習1号は入国1年目、技能実習2号は2〜3年目、技能実習3号は4〜5年目となっています。
1号から2号に以降する場合には、技能実習生が実技試験と学科試験に合格する必要があります。2号から3号へ以降する場合には、技能実習生自身の実技試験の合格のみではなく、監理団体や受け入れ機関側にも一定の要件を満たすことが求められます。
技能実習生を受け入れる場合、受け入れ機関としても、技能実習計画の作成やその実施など、相当な時間をその準備や教育に割く必要があり、人的時間的負担が大きい側面は否定できません。また、先述のとおり、技能実習生を人手不足の補填としてはいけない点も業界的には悩ましいことです。
他方、受け入れた技能実習生の縁で、海外へのパイプを形成できる可能性が期待できる点は、今後の外国労働者受け入れにあたり、大きなメリットです。
また、受け入れ機関の中で慣例化していたルールやマニュアルを見直しするきっかけが生まれる点も、既存の従業員の意識改革や技術の向上化といった面でメリットといえるでしょう。
技能実習生は、最長5年しか日本に在留することができませんでしたが、条件を満たせば、新たに創設された「特定技能介護」の在留資格に移行することも可能です。
特定技能介護
特定技能制度は、2019年4月1日に「出入国管理及び難民認定法及び法務省設置法の一部を改正する法律」(平成30年法律第102号)が施行され、新設された在留資格です。
特定技能制度の意義は「中小・小規模事業者をはじめとした深刻化する人手不足に対応するため、生産性向上や国内人材の確保のための取組をおこなってもなお人材を確保することが困難な状況にある産業上の分野において、一定の専門性・技能を有し即戦力となる外国人を受け入れ」ることにあるとされています。
特定技能制度は「深刻化する人手不足に対応する」ための制度と大々的に謳っている点、技能実習制度との大きな違いといえます。
特定技能は、特定技能1号と特定技能2号があります。特定技能1号には14種類の職種がありますが、特定技能1号からの移行が必要な特定技能2号には2種類しかなく、今現在、
介護はその2種類に含まれていません。
介護分野での特定技能1号は、技能実習生と同じく原則5年間の就業が可能です。
特定技能の特色としましては、新設の事業所でも外国人の雇用が可能という点にあります。他方、派遣形態での雇用は出来ない点、訪問系サービスはNGな点、注意が必要です。
また、特定技能1号の外国人労働者を雇用した受け入れ機関は、介護分野の協議会への加入が義務付けられています。また、同外国人労働者が「特定技能」の在留資格に基づく活動を安定的かつ円滑に行うことができるようにするための職業生活上、日常生活上又は社会生活上の支援の実施に関する計画(1号特定技能外国人支援計画)の作成と支援を行わなければなりません(当該業務は、登録支援機関に一部又は全部委託することが可能です。条件を満たせば、内製化することも可能で、コスト削減の観点からも、内製化を目指していくことが望ましいでしょう。)。
さらに、4半期に1度、受け入れ機関区域管轄の出入国在留管理局に、勤務状況等に関する定期届出が必要になります。
外国人雇用を行う上での注意点
介護事業所で外国人労働者の雇用を実施する場合、外国人労働者に従事させる業務内容を確定させることはもちろん、受け入れ機関側も外国人労働者を雇用させるための要件を満たしているかを十分に理解した上で、どのような在留資格の外国人労働者を雇用できるのか、精査していく必要があります。
業務内容が申請時の内容と異なってしまった場合、それが意図的ではなくとも、不法就労助長罪に該当し刑事罰を受ける可能性や、外国人労働者の雇用ができなくなりますので、十分に注意が必要です。
従事可能な業務内容の明確化・事業所内での共有、在留資格別に必要な対応を適格に行う
介護及びEPA介護の在留資格を持つ外国人労働者は、業務の制限がありません。また、在留期間の制限がなく日本人と同じように働くことがきるほか、出入国在留管理局への定期的な届出や監理団体、登録支援機関などとの連携も求められていませんので事務的金銭的負担が少ない点も魅力的で、ぜひとも雇用したい人材といえるでしょう。
技能実習生は、そもそも人材不足の補填としてはいけない点は注意が必要で、設立3年以上の事業所という制限もありますので、外国人労働者の雇用目的と照らし合わせ、検討する必要があります。
また、技能実習計画の作成及び実施や監理団体との連携・出入国在留管理局への定期届出が必要な点など、受け入れ機関側にも、技能実習生を受け入れるにあたっての体制を整えておく必要があります。
特定技能は、技能実習生と違い人材不足の補填としての雇用が可能な点、受け入れ機関の設立年数を問わないという点で、介護事業所が抱える問題解消に役立つ制度といえ、また、外国人労働者にとっても、介護の在留資格よりハードルが低いことから、まずは、特定技能外国人を雇用することが現実的な手段です。
ただ、特定技能の在留資格を持つ外国人労働者を雇用する場合も、技能実習生と似ている制度があり、特定技能協議会への入会が義務付けられていたり(費用は発生しません)、登録支援機関に特定技能外国人の支援業務を委託したり(登録支援機関との業務委託契約に基づく費用が発生しますが、条件を満たせば内製化も可能です。)、出入国在留管理局への定期届出が年4回必要など、事務的金銭的負担が生じることは留意点です。
日本語教育の機会の提供
いずれの在留資格の外国人労働者を雇用するにしても、利用者とのコミュニケーションが重要な介護事業において、より高いレベルの日本語を習得してもらうことは必須課題です。
受け入れ機関としては、継続的な日本語教育の機会の提供や、外国人労働者でも理解しやすいマニュアルの作成、働きやすい環境を整備していくことが必要です。
外国人労働者の母国の文化を所内で共有することも、円滑なコミュニケーションを生み出す機会となるでしょう。
当事務所でサポートできること
当事務所では介護事業所様に特化して法的なサポートを実施しております。また、外国人雇用に関する相談対応も実績があるため、貴社での雇用理由、社内体制等を考慮した上で最適な雇用方法をご提案させて頂きます。
特定技能外国人の支援業務の内製化支援
特定技能制度が創設されて一定期間が経過したことから、専門学校や大学を卒業した留学生を特定技能で雇用する介護事業所様だけでなく、技能自習から移行した特定技能外国人を雇用されている介護事業所様も増加しています。こうした介護事業所様から、支援業務の委託費用が大きな負担となっているという声をお聴きします。登録支援機関に対し支援業務を全部委託した場合の費用は、一人あたり月3万円前後と言われています。数人から数十名の特定技能外国人を雇用している場合、相当な負担となります。
特定技能外国人を複数人雇用されている介護事業所様は、一定の条件を満たせば、支援業務を登録支援機関に委託せず、内製化することが可能です。内製化することで、費用を節減できるだけでなく、支援業務を人材育成に繋げることができます。社内の体制次第では一部を登録支援機関に委託し、一部を内製化することもあり得ます。当事務所では、こうした支援業務の内製化するための条件整備や内製化後の支援業務をサポートします。
外国人材の受入れ支援
外国人雇用の受入を検討されている企業様に向けて、外国人材の受入れに向けたトータルサポートを行います。具体的には、現状の労務管理体制レビューをさせていただいたうえで、貴所で受入れ可能な在留資格の選定から、受入を実施するために必要な具体的な改善点を含めた対応についてアドバイスをさせていただきます。
「受入を検討しているが、どの在留資格が良いのか分からない」
「関係法令が複雑なため、外国人雇用について興味はあるが、不安が大きい」という企業様に対しても、そのような不安を除けるようサポートをさせていただきます。
在留資格申請等の各種手続き
外国人材の雇用について注意が必要なのが、細かい各種手続きの部分です。在留資格については十分に把握していないと不法就労に該当してしまうなどのリスクがあります。また特定技能外国人の場合、ビザの更新だけでなく、四半期の定期届出等の各種提出書類の手続きも適切なタイミングで準備が必要です。当事務所では外国人材の雇用に関わる各種手続きの代行が可能です。
外国人材の労務管理支援
外国人材については採用後の管理が重要です。適法な外国人材の管理に向けて、労務管理体制のアドバイスはもちろん、就労中の外国人材個人の日本の在留に関するお悩みについても相談対応が可能です。多くのリスクがあるからこそ、専門家と協力をしながら、外国人材・企業の双方で理想的な就労環境の整備に向けてサポートさせていただきます。