無断欠勤・虐待等の社員で起こりやすい問題行動への対応

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無断欠勤、遅刻、早退

無断欠勤、遅刻、早退について、時間分の減給はするが、注意や指導をきちんとしない事業所があります。

そのような行為が続くと、経営者側がなめられて、従業員の統率に支障をきたしたり、他の従業員の不満につながります。

また、当該職員から残業代請求など会社側に権利主張がなされ際に、無断欠勤等について懲戒処分しようとしても、時間が経過し過ぎて処分ができないということもあります。

記録を残すだけでなく、文書で指導した上で、それでも続く場合には、戒告等の比較的軽い懲戒処分を命じるなど、毅然とした対応が必要です。

 

指示無視

上司の指示を無視する職員に悩む経営者がいらっしゃいますが、この場合、上司だけでなく経営者もなめられています。

雇用契約上、職員に対し、指揮監督権を有しています。業務上必要のある指示については従ってもらう必要があります。従わない場合には、文書で指導し、それでも続く場合には、戒告、減給等の懲戒処分を命じるなど、毅然とした対応をしましょう。

このような対応をすれば、態度をあらためるか、退職することが通常です。

 

横領

横領は言うまでもなく、刑法上犯罪であり、業務上横領罪の法定刑は10年以下の懲役であり、重大犯罪です。

職員が、利用者の現金や預金を自由に扱える状況(機会)があると、借金に追われているなど経済的に困窮した職員が(動機)、

よくあるケースが、職員が計算間違いした場合に、誰も気が付かず、何も非難されないと、お金を融通してもバレないと考え、少しずつ横領するようになり、やがて大きな金額を横領するというものです。

こうしたケースを複数見てきましので、とにかく、利用者や施設のお金や預金の管理を一人の職員に任せないということが重要です。

万が一発覚した場合には、まず、事実関係を調査し、横領した金額を確認し、通帳や事情聴取によって裏付けを取ります(証拠収集)。その上で、職員に対し返還を求めることは当然ですが、さらに、懲戒処分を検討することになります。

刑法上の犯罪に及んでいることから、懲戒解雇に相当しますが、全額を賠償し自発的に退職する場合などには、諭旨解雇、依願退職として処理することもありえますが、類似事例に対する前例となりますので、弁護士に相談して慎重に対応する必要があります。

また、解雇など雇用契約上の問題とは別に刑事告訴・告発も検討しなければなりません。利用者が被害者の場合、施設とは別に刑事告訴することがあり得ますし、施設が被害者の場合でも被害者が利用者の場合でも、施設として刑事告訴・告発も検討はすべきです。横領した者が賠償したか否か、被害者と示談が成立したか否か、被害金額、加害行為の期間、態様、証拠の有無、施設の性質(公的な施設か否か)など諸般の事情を考慮して、刑事告訴・告発までするかを判断することになります。

刑事告訴手続、損害賠償請求、懲戒処分をするか否かは、難しい法的な評価を踏まえた経営上の判断ですので、必ず弁護士に相談または依頼して進めましょう。

 

虐待

高齢者虐待防止法(2条)において、次のとおり虐待が定義されています。

身体的虐待:高齢者の身体に外傷が生じ、又は生じるおそれのある暴行を加えること。
介護・世話の放棄・放任(ネグレクト):高齢者を衰弱させるような著しい減食又は長時間の放置その他の高齢者を養護すべき職務上の義務を著しく怠ること。
心理的虐待:高齢者に対する著しい暴言又は著しく拒絶的な対応その他の高齢者に著しい心理的外傷を与える
言動を行うこと。
性的虐待 :高齢者にわいせつな行為をすること又は高齢者をしてわいせつな行為をさせること。
経済的虐待:高齢者の財産を不当に処分することその他当該高齢者から不当に財産上の利益を得ること。

こうした虐待行為が発覚した場合、高齢者虐待防止法に従い、直ちに行政に通報する必要があります。

施設としては、虐待行為に及んだ職員の懲戒処分を検討しなければなりません。

また、高齢者虐待防止法は、虐待した職員について刑罰を定めていませんが、高齢者虐待防止法上の虐待に該当する行為は、刑法上の、殺人罪、傷害罪、暴行罪、強制性交等罪、業務上過失致死傷罪などの刑法上の犯罪が成立することが多いです。

事実を確認することが前提となりますが、警察への通報、被害者による告訴、施設による告発も検討しなければなりません。

民事上の違法行為や高齢者虐待防止法違反に求まらず、刑法犯となることも踏まえて、虐待に及んだ職人に対しては毅然とした対応が必要となります。

刑法上の犯罪となるような虐待が発覚したり、虐待の通報を怠った場合には、マスメディアに取り上げられるなどして、利用者が集まらず、従業員も新規に採用することもできず、施設の運営が立ち行かなくなります。

このような事態だけは避けなければなりません。

虐待に及ぶ前のヒヤリハット事案から毅然とした対応が必要です。

 

能力不足

介護サービスの提供時にミスをしてしまう、介護記録への記載を忘れてしまう、作業に時間がかかってしまうなど、能力が不足している職員の対応は、これまで検討してきた問題社員と比較して難しい問題です。

職員それぞれに得意・不得意があります。

当該職員が、すべての業務で能力が不足しているのか、それとも一部の業務で能力が不足しているかを確認する必要があります。

不得意な作業について改善を試みようとしても難しいケースが多いです。特異な業務に集中してもらうために役割分担することや配置転換することも一つの解決策です。

配置転換しても問題が続発するような場合には、退職勧奨せざるを得ないケースもあるでしょう。

(参考 退職勧奨)

退職勧奨する場合も、前提としてミスや遅れなどの問題が続いていることを本人に自覚してもらう必要がありますし、施設としても、客観的な記録として残しておく必要があります。

記録の残し方としては、本人に業務日誌を付けさせた上で、上司が確認するのが良いでしょう。

退職勧奨にも応じない場合には、普通解雇を検討することになります。

懲戒解雇は非違行為がなければ難しいです。解雇する際にポイントについては「解雇」の記事をご参照ください。

 

いずれせよ、問題行動が頻発してしまっている場合、介護事業所にとっては経営に直結する大きな問題です。このような問題社員への対応方法にお困りの方はぜひ一度弁護士にご相談ください。

木蓮法律事務所
お問い合わせはこちらから TEL:092-753-8035 平日(土日祝除く)9:00~18:00メールでのお問い合わせ
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