残業代請求の対策・対応
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こんなお悩みはありませんか?
退職した職員から残業代請求を受けたことがある。
夜勤や宿直があること、人事・総務部門の人手不足などから、労働時間に関して、適切な残業代を支払っているか不安がある。
残業代の計算方法について職員から質問を受けたことがある。
残業代請求に関する近年の動向
近年、外部環境の変化等から、残業代請求が頻発かつ高額化する傾向があります。
具体的な残業代請求案件の増加に影響している要因として以下が考えられます。
消滅時効期間の延長
これまでは、残業代請求を含む未払賃金請求権の時効は、2年間でした。
しかし、2020年4月からは、3年間に延長されました。今後、さらに5年間に延長される可能性もあります。
単純に考えて、2年間が3年間になったことで、請求される残業代は1.5倍に増額するのです。
WEB情報の充実
上記の時効期間の延長を含め、インターネット上に残業代請求に関する様々な情報が提供されるようになり、職員の方も簡単に残業代に関する知識を得ることができる時代です。
また、過払金返還請求が下火になりつつあり、個人の権利保護に取り組む弁護士は、残業代請求に取り組む傾向にあります。
そのため、インターネット上には、残業代に関する情報だけでなく、残業代請求の無料診断、相談料・着手金無料などを謳う広告やWEBサイトが増加しています。
SNSによる情報交換
上記のとおり、インターネット上に情報があふれている上、残業代に疑問を感じている職員は、SNSで情報交換します。
残業代請求を受けたことが他の職員に伝われば、自分も請求してみようという気持ちになるは自然です。複数の元職員・現職員から残業代請求を受ける事例が増えています。
このように、不適切な賃金制度・労務管理を続けていれば、残業代請求が頻発し、その額も高額化してしまう可能性が極めて高いといえます。
介護業界で起こりやすい残業代に関する問題
介護業界では次に記載するような残業代請求が問題となることが多いです。心当たりがある経営者の方は弁護士・社会保険労務士に相談して賃金制度や労務管理の方法を変更すべきでしょう。
・夜勤や宿直勤務の際の残業代が適切に支払われていない
詳細記載が可能な場合追記いただく(2~3行程度)
夜勤や宿直勤務の際、事業所の指揮監督下にある待機時間を一切労働時間として認めていない場合、残業代請求を受けるリスクが高いです。
また、夜勤や宿直勤務について、「手当」を支払うだけで、労働時間に応じた賃金を支払っていない場合も、残業代請求を受けるリスクが高いです。
・固定残業制を導入しているが、固定残業時間分を超過した残業代を支払っていない。
詳細記載が可能な場合追記いただく(2~3行程度)
固定残業制を導入しながら、そもそも労働時間(残業時間)を管理していない場合、固定残業分を超過した残業代を支払っていない場合、固定残業の算出方法が不明確な場合が少なくありません。こうした場合、残業代請求を受けるリスクが非常に高いです。不完全あるいは中途半端な固定残業制を導入していた会社側が、固定残業部分を割増賃金の基礎に加えて算出された高額の残業代の支払を命じられる裁判例が多数存在します。
・各種手当を割増賃金の基礎に含めずに、割増賃金(残業代)を計算している。
詳細記載が可能な場合追記いただく(2~3行程度)
割増賃金の基礎から除外される手当は、労働と直接的な関係が薄く、個人的事情に基づいて支給されている7種類(①家族手当②通動手当③別居手当④子女教育手当⑤住宅手当⑥臨時に支払われた賃金⑦1か月を超える期間ごとに支払われる賃金)に限定されています。
処遇改善手当、資格手当、職務手当、宿直手当などは、割増賃金の基礎に含めて割増賃金の単価を計算しなければならない場合がほとんどです。
特に宿直手当など、残業代としての支払であるのか不明確な手当が、残業代の既払金として認められないだけでなく、割増賃金の基礎に加えられて、高額の残業代の支払いを命じられる場合があります。
手当については、割増賃金の基礎に含めなければならないことを考慮して、賃金制度を設計する必要があります。
残業代問題を放置するリスク
残業代が適切に支払われないことによる従業員の退職
詳細記載が可能な場合追記いただく(2~3行程度)
残業代が適切に支払われていないことを知った従業員は、事業所に対して幻滅して意欲が低下するだけではありません。
在職しながら残業代の支払を求めるのは精神的負担が大きいことから、多くが退職を選択します。
人手不足の介護業界では、転職は難しくなく、その上、数十万、数百万円の残業代の支払を受けられる可能性があるのであれば、事業所に不満を持つ従業員が退職を選択することは容易に想像できます。
追加の残業代だけでなく、新たな職員の採用コストも負担しなければならなくなるのです。
予期しない残業代請求による資金繰りの悪化
職員が退職した場合、残業代の遅延損害金は、退職日以降14.6%の遅延損害金がつきますので、相当な負担となります。
さらに、裁判になった場合、未払残業代と同額の付加金の支払を命じられることが少なくなりません。
結果として2倍以上の残業代を支払うことになります。
労働基準監督署から指導を受ける可能性があります。
労働基準法に違反することで、技能実習生や特定技能の外国人を雇用することができなくなる可能性があります。
技能自習生からの移行を含め、特定技能「介護」で外国人を雇用されている事業所が増加しています。
特定技能外国人を雇用する条件として、労働基準法に違反していないことがあります。
残業代の不払いがあれば、新たに特定技能外国人を雇用できないだけでなく、既に雇用している特定技能外国人も雇用できなくなります。
技能実習生についても、労働基準法をはじめとした労働法令に違反すれば、改善命令を受けることがあり、改善命令に従わない場合には、罰則を受けるだけでなく、実習計画の認定の取消等の厳しい措置を受ける可能性があります。
こうした行政処分だけでなく、残業代不払いが報道されることによって、信用を失い、事業所の運営が困難となるリスクも考慮する必要があります。
事業所に必要な対応
残業代請求を受けない適切な賃金制度・労務管理体制を構築する必要があります。
具体的に残業代請求を受けた場合には、交渉により解決するのか、裁判で徹底的に争うのか方針を決めて対応する必要があります。
当事務所としては、安易に和解はしませんが、こうした労働事件では、交渉段階で可能な限り主張立証を尽くした上で、和解で紛争を解決することも少なくありません。
なぜなら、
①裁判実務は労働者保護を重視する傾向がある
②裁判手続を闘うのは人的・経済的負担が少なくない
③判決では、遅延損害金だけでなく、付加金の支払を命じられる場合がある
④判決により多人数が結果を知ることになり、類似の請求が続発するリスクやレピュテーションリスクがある
からです。
しかし、裁判で争うべきケースもありますので、残業代請求を受けた事業所は、労働問題や介護業界に精通した弁護士に相談して、個別具体的に方針を決める必要があります。
当事務所でサポートできること
残業代請求のリスク診断
リスク診断をした上で、リスクがあれば、その原因を解消すべく、賃金制度改正(シミュレーション作業、新賃金制度作成、就業規則改訂を含む)をサポートします。
残業代請求に関する代理人交渉
具体的に請求を受けている場合には、代理人として相手方と交渉します。
事業所としては、交渉により解決した方が望ましい事案が多いことから、当事務所は、交渉段階で具体的な実労働時間を計算して、証拠に基づき主張するなどして、可能な限り交渉で有利な解決を目指しています。