問題社員対応・対策

問題社員の定義と知っておくべき基礎知識

一般的に「問題社員」といっても起こしてしまう問題行為には様々な種類があります。

介護業界の場合には無断欠勤やハラスメントの問題のみではなく、業界特有の虐待や転倒事故の多発の問題を抱えるリスクがあります。まずは問題社員の基礎知識をお伝えします。

問題社員の種類

問題社員は大きく分けて、素行不良型と能力不足型の2つに分けられます。

介護事業所においてよくある素行不良型の具体例は、パワハラ、セクハラ、無断欠勤、横領、虐待等の問題行為を起こしてしまうケースが該当し、能力不足型の具体例は、転倒事故多発、介護記録記の記載漏れ、クレーム頻発等の問題行為を起こしてしまうケースが該当します。

職員間でのパワハラ

上司の部下に対するパワハラが挙げられます。

殴る蹴るなど暴力を伴うパワハラが許されないことは明らかですが、最近では、数10分以上の長時間にわたる叱責、毎日の継続的な叱責がパワハラにあたると認定された裁判例が増えており、業務上必要な指導・監督とパワハラの境界線が問題となることが多いです。

他方で、最近は厳しく指導すればパワハラと言われてしまうのではないかと恐れ、指導・監督を躊躇する経営者・管理職の方もいっしゃいます。

パワハラを恐れて指導・監督をおろそかにすれば、職員の問題行動に注意して被害を防止しなかったことを理由に事業所が責任を問われてしまいます。また、被害を受けた職員が就労環境の悪化を理由に離職してしまう可能性もあります。

パワハラに関する解説記事はこちらから

職員間でのパワハラ

男性上司による女性職員に対するパワハラの代表例として、職員間でのパワハラも多発しています。

意味がわかりやすいパワハラである「対価型パワハラ」だけでなく、「環境型パワハラ」の事例も増えています。

特に介護事業所では、訪問介護の移動中であったり、施設内での密室状況といったパワハラが発生しやすい状況が存在するため、注意が必要です。

職員・利用者間でのパワハラ

職員間のパワハラだけではなく、職員の利用者に対するパワハラ、利用者またはその家族による職員に対するパワハラが発生するのが介護業界の特徴です。

職員間のパワハラが許されないことはもちろんですが、職員による利用者に対するパワハラは、苦しい立場にある利用者の弱みにつけ込むことが多く許されるものではありません。

事業所の評判にも関わるものであり、その発生を防がなければなりません。

残念ながら、利用者またはその家族から職員に対してパワハラがなされることがあります。

特に訪問介護においては、密室状況が発生しやすいですし、介護にあたり身体的接触を伴うためパワハラが発生しやすい状況といえます。

介護職員の方は気持ちが優しく献身的な方が多いため、当該行為がパワハラに該当すると明確に意識しないで、なんとなく悩んでいらっしゃると言うケースも多いです。

しかしこのようなケースを放置すれば、当該職員の方が心身の調子を崩したり、職場環境の悪化等を理由に退職されてしまったりします。それ自体許されないことですし、人手不足に苦しむ介護事業所の経営者としては非常に大きな痛手となります。

セクハラに関する解説記事はこちらから

社員による横領

職員の方が、利用者の方から管理を任された預貯金・現金を横領してしまう事例が少なくありません。

横領とまで言えなくとも、不適切な金銭の授受や費消は非常に多く発生しています。

横領となれば、刑事犯罪です。

民事的にも、事業所が使用者として損害賠償責任を負うことになります。

事業所の評判に関わる重要な問題であり、経営全体に影響します。

こうした問題の発生を予防することも重要ですが、発生後の対応も非常に重要です。

利用者への虐待

職員は、判断能力が衰えた高齢者等を介護する機会が多いわけですが、そうした利用者の方に頼れる親族がおらず、介護施設や職員だけが頼みの綱という状況が少なくありません。

担当職員が真摯に職務に取り組んでいれば問題はありませんが、人間には弱い面があります。

悪事を働く機会(密室である。利用者が頼っている)があり、動機が存在(強いストレス等)、それを正当化する理由(過重労働、高齢者の判断能力等)という3条件が揃うことで、職員が高齢者に対し、暴行、脅し、侮辱、性的な行為の強要、本人が希望する金銭使用の制限、その他の虐待に及んでしまうことがあります。

刑事犯罪の横領、傷害等にあたる場合だけでなく、犯罪行為には該当しないが、グレーな事案も存在します。

問題社員の各種問題行動への対応の解説記事はこちらから

問題行動を起こしてしまう社員については、すぐに解雇したいとおっしゃる経営者の方も多いです。

横領や傷害といった犯罪行為が認められれば、懲戒解雇が可能ですが、明確な犯罪行為が認められないケースでは解雇については慎重に検討する必要があります。

日本の労働法制及び裁判実務では、解雇は簡単ではないからです。

解雇は労働者にとって死刑宣告に等しいと言われることもあるとおり、解雇された職員は弁護士に相談する可能性が高く、解雇に問題があれば、裁判手続を選択されることが想定されます。

問題行動が発覚した場合には、まず事実関係を調査したうえで、指導、配置転換、懲戒処分の要否などの対応を慎重に検討しましょう。とにかく、事実関係の調査が重要です。

問題社員対応を放置するリスク

問題社員の問題行動を放置すれば、被害を受けた利用者や職員から事業所が損害賠償請求を受けます。

事業所(会社や法人)だけでなく、役員が損害賠償請求を受ける事例も増加しています。

利用者が利用契約を解約したり、悪い評判が広まり利用申込みが減少します。

職場環境 が悪いことから職員が退職したり悪い噂が広まり新規採用に影響が出ることもあります。

したがって、事業所の経営者は問題社員に対し毅然とした対応をとらなければなりません。

職員によるパワハラ・セクハラ・虐待の問題が起きた場合の法的責任

被害者に対しパワハラ・セクハラに及んだ職員または代表者個人が損害賠償責任を負うことになります。(民法709条等)事業所は下記のような法令が適用され、損害賠償義務を負うことになります。

①使用者責任(民法715条)

 職員の違法な行為について会社が責任を負うことを定めた条文です。

②雇用契約上の債務不履行(安全配慮義務違反、民法415条)

 会社は、職員との間で雇用契約を締結していますが、雇用契約上、職員の安全には配慮する義務を負っています。

被害を受けた職員が、会社に安全配慮義務に違反があったとして、損害賠償請求することがあります。

③会社法350条に基づく責任(代表者の義務違反について会社が責任を負う。)

 代表者が違法行為をした場合に、会社が責任を負うことを定めた条文です。

 代表者、他の取締役についても、パワハラ・セクハラを認識しながら黙認した場合に、会社とは別に会社法429条に基づく損害賠償責任を負うリスクがあります。

問題発覚による従業員の離職

パワハラ・セクハラが発生し、その対応を施設側が誤れば、被害を受けた職員が施設に幻滅して退職してしまいます。

こうした被害を受ける職員は大人しい真面目な方が多いです。

貴重な人材を失うことになります。

欠員を補充するために、採用サイトへの掲載料や人材紹介業者に対して支払う紹介料だけで、少なくとも数十万円は要するでしょう。

失う可能性があるのは被害を受けていた職員だけではありません。

真面目な職員を守ることができなかった施設側に対し、他の職員が愛想を尽かし、離職することも少なくありません。

人手不足感の深刻化による経営体制への影響

利用者の人数に対して介護職員が不足すれば、法令違反となる場合があり得ます。

直ちに法令違反とならなくとも、新しく利用者を受け入れることができない場合も少なくありません。

人手不足により現在のスタッフに負担がかかり、労災が発生したり、過重労働やストレスで退職してしまうおそれもあります。こうなると、サービスレベルも低下し、評判が悪化し、新規採用も困難となります。

新規採用が困難となれば、人手不足になり・・・。まさに悪循環です。

事業所として必要な対応

使用者と労働者の関係は雇用契約に基づくものです。

使用者は雇用契約に基づき労働者に対し指揮監督権を行使することができます。

法律的な表現で説明しましたが、要するに、問題社員に対し、毅然とした指導・監督をしたうえで、改善が見られない場合には適切な対応をとることが必要です。

問題社員への指導・監督

問題社員に対し、個別面談により指導する、内部及び外部の研修を受講させるなどの指導・監督をする必要があります。

(当事務所においても研修を実施していますので、遠慮なくご相談ください。)

重要なのは、こうした指導・監督内容(問題行動の記録を含む)を記録に残しておくことです。

指導・監督しても態度が改善せず、後に懲戒処分を命じざるを得ない場合に、非常に重要な証拠となります。

ただ、本来業務がありますので、記録を残すための作業負担が大きくなると継続できません。

また、本人の自己認識に問題があり、能力が不足している場合など、面談指導や研修では改善が見込めない問題社員もいます。

そこで、本人に毎日、簡単な業務日報を作成させ、その業務日報を上司が確認して指導を積み重ねるという方法をお勧めしています。

この方法によれば、施設側の作業負担を大きくない上、本人に問題を客観的に自覚させやすいです。また、業務日報が客観的な証拠となります。

指導をしても改善されない場合の対応

上記のような指導・監督を実施しても改善がみられない場合には、懲戒処分や退職勧奨等の対応が検討できます。

退職をしていただくまでのフローとしても様々な選択肢があるため、社員の問題行動や関係性を考慮したうえで、どのような対応が適切かどうか判断をする必要があります。

指導後も改善が見られない場合は?企業で対応できる対処方法に関する解説記事はこちらから

当事務所でサポートできること

当事務所では上記のような問題社員への対応について、法律の専門家としての立場から就労環境の改善に向けたご提案をさせていただきます。

退職勧奨への同席

問題社員に対し退職勧奨したところ、後になって、違法な退職勧奨であるから、合意退職は無効だとして、裁判で争われることが少なくありません。

後に違法と非難されないために、退職勧奨のポイント・手続をサポートします。場合によっては、同席させて頂くこともできます。

退職勧奨は経営者にとっても辛いことです。1対1で対応することでお互いに感情的な対応となってしまうこともあります。

弁護士が同席することでお互いに冷静に話し合うことができますし、経営者の方は精神的に落ち着いて対応することができます。

懲戒処分対応等の書面作成

ここまで説明させて頂いたとおり、懲戒処分においては、どのような事実があったかを証拠に基づき認定すること、弁明の機会を与えるなどの手続保障を確保することが重要です。

そして、裁判において重要な証拠となるのは書面です。

従業員からの聴取内容を記載した書面、問題社員に対し注意した書面、懲戒処分を通知した書面、弁解の機会を与え事を裏付ける書面など、手続を適正に実践したことの裏付け資料としての書面が非常に重要です。

人事・総務が充実した大企業であれば、こうした作業に慣れているでしょうが、中小の介護施設においては、こうした作業は紛争に慣れた弁護士に依頼して丁寧に進めるべきです。

就業規則のチェック・改定

法令の改正、制定に合わせて、就業規則を改訂することはもちろん必要ですが、形式的な面しか確認していない施設・会社が非常に多いです。

法人の設立時に形式的に作成したまま、改訂されていない就業規則が紛争の原因となったり、施設・会社側に不利になる事例が後を絶ちません。

就業規則に記載されていることは、労働者との間の最低限度の基準、つまり約束事となり、施設・会社側はその内容を守らなければならないのです。雇用契約において別の合意をしているという言い訳は通用しません。

また、各種助成金を申請するにあたり、就業規則に記載すべき事項もあります。

したがって、就業規則の記載内容が、実態と整合しているか、意図せず施設側に不利になっていないか、助成金の要件を満たすか等を確認して、定期的に改訂する必要があります。

当事務所は、顧問契約を締結させて頂き、定期的に打合せを行い、就業規則を定期的に改訂し、紛争を未然に防止します。

顧問契約による就業環境の整備

具体的な社員に関する相談はもちろん、問題社員が発生しないような体制づくりに関する総合的なサポートも可能です。ぜひ一度当事務所にご相談ください。

木蓮法律事務所
お問い合わせはこちらから TEL:092-753-8035 平日(土日祝除く)9:00~18:00メールでのお問い合わせ
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